2008年4月24日木曜日

コモングラウンド理論から見たメーリングリストの難点

堤です。
コミュニケーション理論の一つに「コモングラウンド理論」というのがあります。

コモングラウンド理論では、「コミュニケーション = グラウンディングさせる活動」と捉えます。グラウンディングというのは、共通の理解(コモングラウンド)に到達するために、齟齬を解消するといった意味です。素朴な例としては、相手が使った単語の意味が曖昧でよく分からないときに、聞きなおす、などがあります。

私たちは、自分の立場や、会話のシチュエーション、相手の外見などから、対話の相手と、会話を始める前に多くのコモングラウンドを共有しています。

例えば、空港で、大きな荷物を抱えた人が、制服を着た人に向かって、「ボストン!」と言えば、制服を着た人は、パッとある通路を指差したりします。蕎麦屋に行って、「もり」と言えば、もりそばが出てきます。アメリカのドラッグストアなんかだと、不機嫌そうな店員が、レジ打ちをした後「4, 50」なんてそっけなく言いますが、これは4m50cmでも、4時50分でもなく、当然4ドル50セントという意味です。

これらの例は、全く齟齬がない場合ですが、日常生活や仕事では、多かれ少なかれズレがあって、その解消に手間と時間を使います。

例えば、私がオーストラリアに行った時、シドニーの売店で、コーヒーを頼んだら、「White or Black?」と聞かれました。ホワイトコーヒーって何だろうと思い「White?」と聞いたら、単にミルクが入っているか否かということでした。

そこで出てくるのが、最小協調努力(Least Collaborative Effort)という仮説です。コモングラウンド理論では、人間はグラウンディングに必要と考えられる努力を、最小化しようとすると考えられています。なるべく少ない手間でコモングラウンドに至ろうとする、というわけです。

質問の仕方や、言葉の選び方、間の取り方、はては、コミュニケーション手段の使い分けまで、人間は努力を最小化しようと、努力:-)します。

実は、メーリングリストで使っている電子メールという手段は、かなり大きな労力を必要とする手段です。電子メールには、同期コスト(タイミングを合わせる必要性)や遅延コスト(配達が遅れた場合のデメリット)が少ない代わりに、色々な難点があります。

つまり、もらったメールにコメントしようかな、と思っても、頭を整理して(整理コスト)、文章を書いて(作成コスト)、送付すると、修正がきかないし(修正コスト)、今までROMだったのにメールを出すのは敷居が高いし(話者交代コスト)、失敗したらメンバ全員に知れ渡ってしまう(失敗コスト)、とコストだらけです。

じゃあメールを書くのは止めておこう、となるのは人間にとって自然な流れです。

飛行船通信社の活動を活発化するには、これらのコストをどう下げてゆくかが一つの鍵になると思います。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

素晴らしい記事を読ませていただきました。
ちょうど自分のコミュニティで大きなML上のコミュニケーションに関わるトラブがあったので、目から鱗でした。

ありがとうございました。

fewzio さんのコメント...

堤です。コメントありがとうございました。
何か参考になったようで、なによりです。