2010年7月2日金曜日

列車のファンタジー

出張帰り、家の近所のカフェで少しくつろいでいる。さすがにこの時間、客は少ない。店内には、オーボエの軽快な音楽が流れている。曲調はウェスタンか、カントリーか。

線路の側の店なので、時々電車が通る音がする。天井にある大きな羽が空気をゆっくり掻いている。エアコンの風が直接あたるより快適な気がするが、なぜだろう。

そういえば、けさ日暮里駅のホームで、目の前をEF81に牽引された寝台特急を見た。青い客車の窓に、趣きのある明かりが並んでいるのが見えた。北斗星だった。

N700が普及して、新幹線はずいぶん快適になった。スピードも速い。今の時代、たしかに寝台特急は贅沢な無駄なのだろう。ただ私には憧れがある。列車で寝起きして遠くまで旅をする。見知らぬ土地で、車窓から朝日を見る。

芥川龍之介の『蜜柑』という短編を読んだ。横須賀線の話だ。目の覚めるような見事な短編で、蜜柑のシーンが映画の1シーンのように記憶に残る。心の奥のあたりがジンとなる。

列車に乗って、少し遠くまで行ってみたいな。