2010年3月3日水曜日

インタラクション2010で見えた希望

インタラクション2010という会議に参加して、残念な印象を持ったことを、ここに書いたが、2日目に参加して少し救われる思いがした。フェアな感想という意味で、それも書き残しておこう。

一つは、人間の奥深さに迫ろうという萌芽が見えたことだ。しばらく前から暦本さんらは、人体の機構である、視覚認知、筋電、皮膚電気抵抗などを活用した研究をシリーズで発表している。今回も複数の発表があった。彼らの研究は、人間探求の出発点に位置づけられる。どれも実用には遠いが意志を感じる。他にも古くからのUI研究者が関わった研究に方向性として近いものがあった。私の考える方向とは違うが、その「もがいている」様子は頼もしく感じた。

また、どちらかというとアート系の発表の中に、人間とのインタラクションを真剣に見つめているものがいくつかあった。世間一般に流布している「いわゆる」人間ではなく、彼らなりに人間を考え、その仮説に基づいて、作品を作っている。これらも、まだ本質を掴んでいるようには見えなかったが、その意気込みには共感した。

なお、残念ながら自然現象の奥深さへのアプローチは皆無に近かった。ただ波動方程式を使って動きのある模様を描いたり、呼吸しているような布の動きを追求したり、数理的なモデルの方面から探求しようというアプローチがいくつかあって、一つの可能性として評価したいと思った。

ところで、こういった会議で紹介される膨大な数の研究の多くは、アイデアメーションの類だろう。その膨大な捨石の中から、光を放つものが生まれる。アイデアメーションは数が多くないと意味がない。そういう少し引いた視点にたてば、この会議もそんなに捨てたものじゃない。たぶん、今は端境期にあたるのだろう。

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