2010年7月2日金曜日

列車のファンタジー

出張帰り、家の近所のカフェで少しくつろいでいる。さすがにこの時間、客は少ない。店内には、オーボエの軽快な音楽が流れている。曲調はウェスタンか、カントリーか。

線路の側の店なので、時々電車が通る音がする。天井にある大きな羽が空気をゆっくり掻いている。エアコンの風が直接あたるより快適な気がするが、なぜだろう。

そういえば、けさ日暮里駅のホームで、目の前をEF81に牽引された寝台特急を見た。青い客車の窓に、趣きのある明かりが並んでいるのが見えた。北斗星だった。

N700が普及して、新幹線はずいぶん快適になった。スピードも速い。今の時代、たしかに寝台特急は贅沢な無駄なのだろう。ただ私には憧れがある。列車で寝起きして遠くまで旅をする。見知らぬ土地で、車窓から朝日を見る。

芥川龍之介の『蜜柑』という短編を読んだ。横須賀線の話だ。目の覚めるような見事な短編で、蜜柑のシーンが映画の1シーンのように記憶に残る。心の奥のあたりがジンとなる。

列車に乗って、少し遠くまで行ってみたいな。

2010年5月19日水曜日

前へ一歩出る


前へ一歩出ると楽になる。

子供の頃から今まで何度も一歩手前でもじもじして踏み出せず堂々巡りをして苦しい思いをしたことがある。

小学校低学年のころに近所の友達の家に行き、裏口の扉の前でさんざん逡巡して、けっきょく家に帰ってしまったことがある。たぶん約束していなくて、でも遊びたいと思って、家から来たのだろうと思う。その友達の家の裏口の白いペンキの塗られた古びた戸のイメージがいまだに瞼に浮かぶ。実際どのくらいの時間、立ち尽くしていたのかは分からない。ほんの何十秒だったのか、数十分もなのか。でも、その時の私には無限に長い感じがした。

ちょっとした行き違いが心に引っかかって、喋りにくくなった同僚に声を掛けるのをためらう。小さなことなのだけど、それが妙に印象に覆いかぶさって、ちょうど仕事も忙しいし、相手も忙しそうにしているから、と自分にする言い訳はたくさんあって、時間が過ぎてゆく。

気に掛かる仕事を持ちつつ、また連絡の大事なメールを待ちつつ、少し長い休みに入ってしまって、事態が悪くなっていないといいが、と思いながら出勤する月曜日、ブルーだ。

そんな時、いまの自分をちょっと横におく。自分の思考、ためらい、慮り、プライド、羞恥心、怒り、思惑、仕事、体調、何もかも、今の自分というものを、横におく。すべてを置いて、前へ一歩出る。

電話をかける。声をかける。近づいて顔を見合わせる。手をあげる。メールを書く。入り口に踏み込む。ドアを叩く。職場に出て机に座る。挨拶をする。前へ一歩足を踏み出す。

ほとんどの場合、拍子抜けするぐらい簡単に事が進む。上手くいかない時も、一歩後ろでもじもじしていたころに比べるとずっと楽だと感じる。

だけどまた、たぶん「もじもじ」してしまうんだろうなぁ。未来の自分にエール。

2010年5月9日日曜日

『「お客様」がやかましい』感想

『「お客様」がやかましい』ちくまプリマー新書 森 真一

森さん、あいかわらず見事、「あ、まさにそう」と感じる一冊だ。わかりやすい本だけれど、問題の根深さには目が眩む。そのため、ところどころ読むのが辛くなった。

昔はデパートや、気取ったレストランでしか聞かなかった「お客様」という呼び方が、普通になっている。100円のハンバーガーを買っても、105円の野菜ジュースを買っても、「お客様」である。この「お客様至上主義」の現状と、そのクリティカルな悪影響を語る本だ。

ただ、この本でも取り上げられていて、ネットでも時々見かける次の意見にはちょっと異論がある。それは、海外だと日本のような馬鹿丁寧な顧客対応はしないし、それで気にならない、という話だ。この話の前段、日本のようなバカ丁寧さはない、には同意、しかし後段の「気にならない」には一部反対だ。

まず、ヨーロッパではあまり気にならない、というのは確かだ。それなりに金を出す店では、それなりの対応をしてくれる。スーパーマーケットに行くと、全体に事務的な対応をされる。また個人商店に行けば、人懐っこい対応をされることも多い。ドイツ、スイス、オーストリア、イタリアなど、お国柄で多少違うが、まぁバランスの取れた対応と感じることが多い。日本での対応に慣れていると多少素っ気ない感じはするが、まぁ不快ではない。

しかし、アメリカの対応は酷いと思う。素っ気ないとか、事務的というレベルではなく、ぞんざいだ。時に乱暴に近い。私はニューヨークしかしらないので,他の街は違うのかもしれないが。街の商店などで買い物をすると、何か嫌な事でもあったのか、というような対応に何度も出会う。実際彼ら・彼女らは嫌な目にあっているのかもしれない。もちろん高級イタリアンレストランなど、それなりに金を出す店に行けば対応は違う。しかし、このドライな感じは、日本人の私にとって、けっこう寂しい感じがする。

EUは統合が進むにつれて、どんどん変わっているので、いずれはヨーロッパもアメリカのようになるのだろうか。そうなら寂しいと思う。

そして、実は日本のチェーン店などでの、口だけ丁寧な対応が彷彿とさせるのは、アメリカのぞんざいな対応だ。口先だけの丁寧さは、次の瞬間に殴られるかもしれない、というような危うい人間関係を感じる。

私は、相手とのやり取り、ちょっとした修正、確認、挨拶、表情、仕草などを通じて、相手の人となり、状態を知る。そして、そのやり取りを通じて、少なくとも次の瞬間に、ぶち切れたりはしないと安心する。

しかし口先だけの丁寧な対応、マニュアル通りの台詞を繰り返す人物からは、そういった状態情報を得ることができない。だから不安である。不安なままである。

みんな急いでいる。何かに向かって、一分一秒を急いでいる。無駄なやり取りで「生産性を下げ」ている暇はない。エンデの『モモ』を思い出すね。

2010年4月8日木曜日

Msカレーの店主がお亡くなりになったそうだ

笹塚にエムズカレー(Ms curry)という店があった。
http://r.tabelog.com/tokyo/A1318/A131808/13006913/

先日(2月27日)笹塚散歩したおりに訪れて、美味いポークカレーを頂いた。店主が倒れたのは、その直後らしい。まだ若い人だったのに。

不思議な店だった。

笹塚の商店街の一角に、入店を待つ列があった。店内はカウンターだけで、席が空くと列の先頭から入って着席する。私も順番が来たので、席に座るが、店主は一人もくもくと作業をしている。客の方を見るわけでなく、皿を片付けたり、一人もくもくと作業。

しばらくすると、順番が来たのか、私の目の前に立ち、小さな声でぼそりと注文を聞く。普通盛りか大盛りかが選べるようだ。注文を聞くと、またもくもくと作業に入る。私の前から入店している常連たちは、慣れたもので適当におしゃべりしながら、待っている。

先に入店しても、カウンター全体で1ロットというか、一緒に作るので、早く食べられるわけではない。ポークなど種別ごとに小鍋に人数分を用意して、煮立てるので、みな一緒だ。

サラダみたいのがでてきて、首の細い瓶に、粘性の高いドレッシングが入っている。逆さにしても出てこないので、みなポンポンと底を叩いている。不思議だ。

その内に、ロット毎にカレーがドン、ドンと出てくる。

濃厚で、香ばしく、癖になるタイプの、うまいカレーだった。

店内にはハワイアンかな、波の音と一緒に音楽が流れている。

食べ終わると勘定を払って、出る。店主と顔を合わせたのは、注文時と、勘定時だけ。言葉はふた言程度。

もともと人付き合いがあまり上手ではない人なのだろうと思った。客商売では致命的にも思えるが、いつも店の前には行列。

「お客様はモンスターでも神様」がまかり通る現代に、こういう店が営業出来ているというのは、何か「救い」のような気持ちをいだいて店を後にした。

そうか、お亡くなりになったのか。なんかすごく寂しいぞ。

2010年4月6日火曜日

EvernoteのWindowsアプリが大幅改善

以前,Windows版のEvernoteアプリがひどいということを書いたが,最新版(3.5.2.1764)をダウンロードして,大幅に改善されていることがわかった。やっと使い物になる。
http://www.evernote.com/about/intl/jp/download/

基本的にMac版と,ほぼ同じユーザインタフェース,ほぼ同じ使い勝手になっていると思う(たぶん)。

さらにEvernoteの利便性が上がった。そろそろ年間45ドル払ってプレミアム会員か?

2010年3月27日土曜日

松陰神社前で買い物散歩

妻に連れられて松陰神社前まで世田谷線でお出かけ。
素敵な店がたくさんあった。妻の調査力と街力に感服しました。

ついてすぐ、駅そばのさわやか系の店でカプチーノを頂きました。
フィランジェーリ(イタリアンカフェ)
http://www.nabana-deli.com/
カプチーノ350円!安いけど、おいしい。ピースマークをココアで描いてありました。ここで、目的のパン屋の場所を聞いたところ、すぐ裏とのこと。4時に焼きあがること、すぐ売り切れることも教えてもらいました。

目的のパン屋は、ここ。
ブーランジェリー スドウ(パン)
http://d.hatena.ne.jp/Boulangerie-Sudo/
お洒落なブティックのようなお店です。丁寧に作られた綺麗なパンが並んでいて、並ぶ端から売れてゆきます。いろいろ買ったけど、まだ食べてません。娘はチョコパンを食べて、すごくチョコレートしていて美味いと言ってました。

パンを買った後、文具屋へ。小さなお店。
デスクラボ(文具)
http://www.desklabo.net/
小さな店内に可愛らしい輸入文具が並んでいます。何か覚えがあると思ったら、
吉祥寺の36(サブロ)
http://www.sublo.net/
や、経堂のハルカゼ舎
http://harukazesha.net/
に似てますね。流行りかな。

文具屋に妻を置いて、私は、
美の輪寿司(テイクアウト寿司)
http://seehoo.exblog.jp/3469121/
に行き、いなり寿司とかんぴょう巻きの詰め合わせを買いました。後で調べたら名店らしい。すでに頂きましたが、優しい丁寧な味で美味しかった。この店はいいですね。バッテラや穴子も食べたいな。また行こう。

最後は、
‘OLU’OLU(ドーナッツ)
http://345setagaya.blog.so-net.ne.jp/2010-01-28
でドーナッツを買い求めました。これまた素敵な店構え。昨日いったヒバリを彷彿とする懐かし系のお店でした。女性がひとりのんびり三時を過ごしていました。落ち着ける良い店です。妻がさっき食べてましたが、かなり美味しいらしい。

ということで、ずいぶんと贅沢な気分を味わえる散歩でした。

2010年3月26日金曜日

ごはん屋 ヒバリ

「ごはん屋ヒバリ」というお店に行った。
http://www.tegamisha.com/hibari/
私の徒歩通勤コースの途中、野川から離れるあたりに、神代団地という大きな古い団地がある。その端にある商店街の中にひっそりとある店だ。妻と二人で散歩がてら訪れた。

開放的なピロティを囲む商店街の一角に、童話のように存在する。木造の小学校か、幼稚園といった外観に、シンプルな内装、本棚、内側に事務所がある。水木金土日曜の昼12--14時までのランチと、金土の夜は夕飯があるらしい。店名からして食事がメインなのだろう。今度、食事時に行ってみよう。

今日は喫茶で、コーヒーとチーズケーキをいただいた。おいしかったね。

日が暮れてゆく広場を眺めながら、ストーブで暖を取り、暖かな明かりの下、大きな木のテーブルで書きものをしながら時間が過ぎてゆく。贅沢な時間でした。

駅から離れた古い団地の中にあるので、カフェをやるにはロケーションは良くないと思う。団地に住む人が寄るのだろうか。筋の通った見事な店で、こういう店には長く続いて欲しいと思った。もし私が店をやるとしたら、こういう店だろう。一つの理想型かもしれない。